ブンベツ【完】
お蕎麦が乗っかったお盆を居間の卓袱台に下ろして、いざ中を開けてみたら海老が入ってる器は一個しかなかった。
蓋を開けるなりゲンナリした様子のカイさんはそれ以上なにを言うわけでもなく、海老の他の訳役である玉ねぎの天ぷらを齧った。
「あの、海老食べます?」
流石にお金を払ってるカイさんを放って私だけ食べるのは気が引ける。
卓袱台を挟んで向かいに座るカイさんにそう窺えば。
「海老一本で拗ねるほどガキじゃねぇよ」
「でも」
「いいから素直に食っとけ」
少し口角を上げながら海老を私にくれるらしいカイさん。
私を子供だと思ってるのか有無を言わさずお互い黙ってお蕎麦を平らげた。