ピッキング・カルテット
「怒っていたのかどうかは、あたしもわからない」

宗助は何も返さなかった。

「どうして、マネージャーを辞めたの?」

夏々子は聞いた。

宗助は考えるように黙りこんだ後で、
「自分の世界を持ちたかった…とでも言い訳しておこうかな」
と、呟くように言った。

「念のために言うけど、なっちゃんと出会ったのは僕が退職して1ヶ月後だから」

「…それも聞いたわ。

年明けには退職していたって」

「そうか」

宗助は呟くように返事をした。

彼は、一体何を隠しているのだろうか?

それはBIRDMENだけじゃなく、自分にも言えないことなのだろうか?

夏々子は、宗助を抱きしめている腕をさらに強く抱きしめた。
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