呪い屋〜呪われし幽霊少女〜

黒い力


「なら...俺のせいなら...」

チャンスは、一度だけ。

成功を祈って、会心の一撃を食らわす。

「これで...終わりだ!」

いい具合に思いっきり腹へとめり込んだ俺のパンチは、見事に黒田をうずくまらせた。

「自分が弱ったら力だって弱まるんだろ!」

今ならいける。

麗薇をつれて、逃げるんだ。

そして、もう一度、普通の生活を取り戻すんだ!

「麗薇っ!」

後ろで呻く黒田を確認しながら、麗奈を押し退け、麗薇の手をつかむ。

「頑張って走れ!
自由になるんだ!」

心からの願いを口にし、引っ張って走り出す。

麗薇は変わらず苦しそうだった。

でも、生きていたいという気持ちは、その強く繋がれた手から伝わってきた。

驚きに状況を把握しきれていない様子の麗奈は、床に手をつけたまま、硬直している。

黒田がうずくまっているのも時間の問題。

全力で走った。

予想通り、例の扉のような穴をくぐり抜けることができ、とたんにその穴は塞がった。

麗薇のわずかな温もりを感じながら、生きるために、必死で走った。
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