くれなゐの宮

思わずギョッとして球体が転がってきた方向を見ると、男湯の扉の向こうにとある宮女が立っていた。
そして、彼女はこちらを向いたまま、浴室に響き渡る程の大声で叫ぶ。


「おーい野郎ども!休憩!メシだよ!」




「トウカァ!てめぇ掃除中に酢飯転がすとか脳ミソトチ狂ってんのか!」


その球体が笹の葉に包まれた酢飯だと知ったのは、掃除道具を仕舞い終わってからだった。

ナズはトウカと呼んだ宮女に、恐ろしい気迫で迫る。

しかし彼女は「へいへい」と小指を耳に突っ込み、取れた垢をナズに飛ばした。


途端、余計に騒がしくなる脱衣所。

その光景を見て大きくため息を吐きながら、おれは転がってきた酢飯を渋々口に含んだ。

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