狼少女と王子様Ⅱ
第二章

茜色



あの日あの時


私は何もかも失った気がしていた




家族も友達も恋も

大切なもの全部



だけどそれは私に勘違いだった





失ったからこそ得たものがあったんだ






小さな幸せに気づかずに現実から目を背けて


拒んで傷ついて傷つけて




一人で生きていけると思い込んで

本当はずっと影で支えられていたのに







寂しさや悲しみを持つなんて
心が弱いからだって


私はそんな風に弱くなりたくないって




勝手に扉を閉めて鍵をかけた





でも、あなたはそんな鍵なんて容易く解いて

私の心の中に入ってくる



こじ開けることだって出来たのに

あなたは優しいから


暖かく包んで扉さえ溶かしてしまうんだ





ありがとう


そんなあなたが大好きなんだ。






「ね、凛?」


「えっ!?なんの話?」



驚いた顔で私を見るのは


鉑 凛(はく りん)



生徒会長様だ。




病院から出て数週間



相変わらずの日常を送っていた





渓はやたらと付きまとってくるし


隣の水城くんはしつこい質問はするし


海は心配性だし・・・。




はぁ・・・・。





でも、こんな日常も悪くはないかなと思えるようになってきたのは

みんなのおかげだし


まぁ、いっか・・・。



< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop