誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・これでよしと」


 火は十分になった。


 そろそろ食材の準備を・・・その前に佑典を起こさなくては。


 いったん台のそばを離れ、佑典を起こしに寝室に向かった。


 「佑典・・・。そろそろ焼き肉始めるよ」


 呼んでも反応がないので、ベッドのそばまで近寄って身体をゆすった。


 「佑典。早くしないとお肉、虫さんたちの晩ごはんになっちゃうよ」


 「ん・・・」


 ようやく目を覚ました。


 「さ、準備始めましょう」


 「何の準備?」


 私の手首を掴み、再び連れ戻そうとしているのか、にっこり笑う。


 「・・・さっさと起きないと、お肉全部私が食べちゃうから」


 掴まれた手首を振り解き、バルコニーへと戻ろうとしたところ、佑典ももそもそと起き出した。


 「シャワーしてから、すぐ手伝うから」


 手短にシャワーを済ませ、着替えてから佑典はバルコニーへとやって来た。


 「理恵・・・」


 背を向けて火の調節をしていた私を、後ろからそっと抱きしめた。


 「こんなところでやめなさい。近所の目があるんだから」


 隣の棟までは、約数十メートル。


 まだ夏休み中ゆえ、家族連れが訪れている様子。
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