誘惑~初めての男は彼氏の父~
 立ち去る前に、ふと和仁さんのほうを見つめた。


 夢中になってファインダーを覗き込んでいる。


 あんなに私に好きだと囁き、抱く。


 なのにそんな私を放置して、レンズ越しの世界に夢中になっている。


 かつて佑典が「あの人が本気で愛したのは、レンズの向こうの世界だけ」と口にしていたのを思い出した。


 ・・・。


 そこに私の入り込む余地はないと判断し、歩き去った。


 私は確実に嫉妬している。
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