誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「おかえり。佑典、早かったな」


 電気をつけて和仁さんは玄関へ歩き、チェーンを外した。


 「・・・ていうかどうしたのその格好」


 さっきのヤスと同様、和仁さんはタオルを腰に巻いているだけだった。


 「疲れて寝ていたみたい」


 「裸で寝てたの? もう秋なんだから、気をつけないと風邪ひくよ」


 佑典は靴を脱ぎ、室内へと入った。


 和仁さんの部屋に潜んでいる私の元にも、足音が聞こえてくる・・・。


 「居間も真っ暗、カーテンも開けっ放しでしょ。ずっと寝てたの?」


 真っ暗な居間を見て、佑典は驚いている様子。


 「ああ。作業で疲れていたらしいな」


 「どんな作業か知らないけど、無理しないほうがいいよ。もう年なんだから」


 「・・・お前こそ飲み会があるんじゃなかったのか。ずいぶん早かったな」


 「車だし飲めないから、一次会で退散してきたよ」


 「彼女とは会わなかったのか」


 和仁さんたら、わざとらしい質問を・・・。


 「帰り際に電話かけたんだけど、繋がらなかったな。バイトかな?」


 抱き合う前に電源は切っておいた。


 何も知らない佑典に対し、またちくりと胸が痛む。
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