誘惑~初めての男は彼氏の父~

Xmasソング流れる街角

***


 「イヴの夜はディナーの前に、指輪を選びに行こうと思うんだけど。ディナーの後のほうがいいのかな」


 12月に入り、街の至る所からクリスマスソングが流れてくるようになった。


 店先などにはクリスマスツリーが飾られたり、イルミネーションが煌めいていたり。


 キリスト教徒ではなくとも、この時期はなぜかワクワクしてしまう。


 クリスマスも近い夜、市内のイタリアンレストランで佑典と食事をしていた。


 メインディッシュを食べ終え、デザートを待つ間。


 コーヒーを飲みながら、クリスマスの予定について語り合った。


 「ディナーはこの前メールで伝えた、あの店でいいかな」


 「あの、佑典」


 「指輪のデザインとかで、何かリクエストある?」


 「佑典」


 「サイズとかってよく分からないんだよね。とりあえずははめてみてからでいいよね」


 佑典は自らが企画したプランに夢中で、私の声が聞こえていないらしい。


 「で、パスポートなんだけど。来年何度か理恵にもこっちに来てほしいから、早いうちに取得を、」


 「佑典」


 「ん?」


 ようやく聞こえたようだ。


 「その件なんだけど」


 「何?」


 私は息を飲んだ。


 勇気を振り絞って、伝えなければならない。


 「考え直したいんだよね・・・」


 「えっ、指輪のこと?」


 「違う。婚約のこと」


 「婚約?」


 「ちょっと時期尚早だと思うんだ。今はリセットして、お互いの新しい生活を確立させるのを優先させるべきじゃないかな・・・」
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