小野部長
フラフープ
「フラフープだよ、高峰君。」

「‥は?」

突然何を言い出したのか、と目の前の部長の小野を見やる高峰。

「いや、だからね、フラフープで腰を回していたら、体調がよくなってきたんだよ。だからね、最近では暇さえあれば、腰を回しているんだ。」

「はぁ」

「エレベーターを待ってる時とか、電車を待っている時、何もしないでただ立っているなんてもったいないよ。
そんな時こそ、こう、腰を回して。」

座ったまま腰を回す目の前の部長に戸惑いながら、高峰はそっと周りを見回す。

小ぢんまりした蕎麦屋は、昼時とあって混んではいるが、こちらの話を聞いているような雰囲気はない。

高峰はなぜこんな事になったんだ、と考える。

確か、高峰が柔道を止めた後運動をしているのか、とかそんな話をしていたはずだ。

だから、まぁ話の流れ的にはおかしくはないのだろう。

だが、50歳になろうとしているおじさんのフラフープ姿はあまり想像したくはなかった。

げんなりとした高峰をよそに、ますます饒舌になる小野部長。

「あとね、うーん、なんて言ったかな。ほら、あのサッカーの日本代表になった人なんだけどね、彼が出した体幹を鍛えるって本があったでしょ?あれのね、エクササイズがいいんだよ。」

ずずっと蕎麦をすすりながら、高峰を見る部長。

「こう、肘でやる腕立て伏せ、あるでしょ?あれでね、膝をこう、胸の方にぐっともってきてから伸ばす、っていうのがあるんだけどね、これがねぇ、効くんだよ。」

にこにこ、と笑顔を浮かべて高峰に力説している。
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