野球してる君が大好きです。
球場にサイレンが響く。



威勢のいい声。
清々しい顔。
爽やかな夏空。夏風。




最高の舞台で
日本一険しい山で






頂点に立つために。










「プレイボール‼︎」
彼らの熱い夏が
最後の試合が
始まる。






1〜5回までは
両者無失点のまま



6回ウラ
鳴須河高校の攻撃。

ワンアウト
ランナー2.3塁のチャンス。
彼らはこれを生かす。



翔太先輩が2点タイムリーツーベースヒットを放ち、点差は2点。



そのまま点差は開かず
8回表。
悠介くんのソロホームランにより、1点を返されたがそのあとは三振で抑える。


8回裏。
彼らのチャンスがやってくる。
ノーアウト満塁。
打席には、陽斗が立っている。

陽斗は少し動揺している様子だった。
でも、陽斗なら打てる。
必ず。打てる。











私はベンチから声を張り上げて言った。











「陽斗なら、打てるよ‼︎」










彼に届いただろうか。











私は目をつぶって祈る。











…カキーン









私が効いた音はとても響きがよく
何処かで聞いたことのある音。








バックスクリーンに当たった。







「入った…」







甲子園が湧く。
ベンチも
アルプスも。











夢の舞台でホームラン。






彼のもう一つの夢。
そして、








また一つの夢が叶う。






さっきの悠介くんのホームランは
陽斗の甘く入ったストレートを打った。













次はどうする。










陽斗なら抑えてくれる。






ツーアウト3塁。







優勝まで、残り1アウト。








一球目。




彼が投げたボールは
インコースギリギリのスライダー。



ストライク。







二球目は、悠介くんのファールボール。








これで追い込んだ。
















彼の最後のボールは…














…パシッ







しっかりと響いたボールが収まった音。











直球ど真ん中
空振り三振。















また甲子園が湧いた。










6-1で試合は終了。












鳴須河高校
夏 2連覇達成だ。





試合が終わった後。
最後の礼。
悠介くんと陽斗は
しっかりとお互いを見て
最高の笑顔を見せていた。




陽斗のことはわからないことも多い。
その分、悠介くんの方が
陽斗のこと知っている。




だから、陽斗にとって、
本当に大切なんだと感じた。





校歌も歌い終わり、
閉会式も終わり、




インタビューが行われた。
それを私はベンチから見ていた。



翔太先輩と陽斗はキラキラ輝いていた。

すごくかっこいい。








今、ありがとうと伝えたい人はいますか



そういう質問を受け、
翔太先輩は

「今まで、応援してくださった方々や、監督、コーチ、保護者のみなさんにしっかりと感謝の気持ちを伝えたいです。そして……、」


少し顔が赤い。





翔太先輩は三塁側アルプスの方を向いてしっかり伝える。






「遥香!ありがとうな‼︎」




その一言にも甲子園が湧いた。





次は陽斗の番。









「えー、僕は宮川さんと同じく、今まで、応援してくださった方々や、監督、コーチ、保護者のみなさんにしっかりと感謝の気持ちを伝えたいです。ここまで連れて来てくれた、宮川さんを含め先輩方。本当にありがとうございました。父さん、母さん‼︎今日、来てくれてありがとう‼︎マウンドからしっかり見えたよ‼︎」

陽斗の言葉に感動した。
中3からなかなか会えていなかったのに
今日来ていることもしっかり分かっていて…
実際に見たことはない。
でも、すごく優しい両親なんだろう。


「そして、今日この舞台で約束を守ってくれた悠介。ありがとうな‼︎お前は最高のライバルやし、1番大切で仲良い真友や‼︎ほんまにありがとう‼︎」

彼は拳を出した。


悠介くんはそのインタビュアーの
後ろで泣いていた。


悠介くんも拳を出した。



「来年は…俺らが勝つからな‼︎再来年も俺らが勝つんや‼︎」
「俺らも負けへんぞ‼︎」




また甲子園が湧いた。
素晴らしい友情。




2人の高校球児にとって
最高の夏だっただろう。




「ほかに伝えたい人はいますか?」


その質問に対して
彼は「はい」と答えた。




そして、こちらに向かってくる。





(え、まだインタビュー中…)



彼が手招きをした。
私は彼のところに向かう。








インタビュアーもこっちに来た。






「…帆乃香。本当にありがとう」
「ぇ…、私は…」
「帆乃香のおかげで、こうやって成長できた。帆乃香がいなかったら、俺は…こんなに成長できてなかったから」


そう言って彼は私を抱きしめた。


「ほんまありがとう…っ」




大きな歓声が聞こえる。




普通はこんなことあり得ないのに…。











…いい夏だったなぁ。













陽斗のお父さん、お母さん。
私は実際に見たことはないですが…
陽斗くんのことは誰よりも…
好きですよ。愛してますよ。




私を甲子園に連れてきてくれたのは…、
全て陽斗くんのおかげです。




本当にありがとうございました。










大歓声の中。
夏の高校野球は閉幕した。


















高1夏。













ありがとう、陽斗。












優勝おめでとう。みんな。




















最後に撮った集合写真は
最高の笑顔を見せていた。
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