野球してる君が大好きです。
インタビューも
校歌も
閉会式も終わった。




私はそれらが全て終わるまで
ある場所にいた。

みんなが知らない、
私と陽斗だけが知っている
秘密の場所。










「帆乃香‼︎」
陽斗がやってきた。




私は彼に抱きついた。



「わ!よごれる…」
「いいのっ」
「でも…」
「いいのっ!それより優勝おめでとう」

満面の笑みを彼に向ける。










私は少し体を離した。











「大変なこといっぱいあったけど、陽斗がいてくれて、本当に良かった…」











そう言ったら、
彼にぎゅっと抱き締められた。





「きゃっ」
「…帆乃香…、ほんまありがとう」
「私、なにもしてないよ…?」
「…帆乃香がおらんかったら、野球続けてない。それに、こんな人生送ったりしてへん…」

彼の声は少し切なく聞こえた。


「執事やったけど、いつの間にか、恋人になって、何回も別れて、また付き合っての繰り返しやった。俺は諦めきれんかった」

「うん…」

「野球も、帆乃香も」

「うんっ」

「アメリカに行っとる間。俺は、ずっと野球をしていた。正直辛かったよ。でも、野球が唯一の取り柄だから」

「そんなことないっ」




私は彼の腕の中で言った。





「優しいとこ、かっこいいとこ、野球できるとこ、ぜんぶ含めて、それが…陽斗の取り柄だから」

「…ありがとう」
「うんっ」

「やっぱ、帆乃香おらんとあかんな…」











ドキッとした。
そんなこと言われるのが初めてで、
心臓が鳴り止まない。



私たちは座って話をした。










今までのことや、
甲子園のこと、
家族のこと。





今年の花火大会は
一緒に行こーなって
約束もしてくれた。











「帆乃香…」
不意に名前を呼ばれ、
彼の方を向いた。











唇が重なる。
今までよりも優しく想いの詰まった…。











「俺は…、プロになる。これからも、俺についてきてくれませんか…?」











プロポーズに近い言葉。
もちろん答えは「はい」















ねぇ、陽斗。
私ね、あなたに出会えて
本当によかった。











こんなに大好きな人に出会えて
本当に嬉しくて仕方がなかったの。











辛いこともたくさんあった。
苦しいこともたくさんあったよ。











でも、陽斗となら乗り越えられた。












私は…










やっぱり










君が好き。
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