野球してる君が大好きです。
「な、帆乃香⁉︎」

私は俯いてそのまま続けた。

「お願いよ、お父様…。クビにしないで……」

私の想いが届いたのか、
父は「わかった」と了承してくれた。




「旦那様…ありがとうございます‼︎」
「あぁ…」
「旦那様…?」
「帆乃香の気持ちは分かった…だから、幸せにしてあげろ」
「…?」
「それが使命だろう?」

お父様はニッと笑う。

「は、はい!」

結城の元気そうな返事を聞いてから
部屋を出た。


私はその場に座り込む。
全身の力が抜けた。



「よかったぁ…」
「ありがとうございます…」
「…うん」
「でも、私は謝らなければ…」
「なんで…?」
「お嬢様…、私を庇うために、わざわざ嘘をつかせてしまい…申し訳ございませんでした…。本当にありがとうございます…」

嘘なんかじゃない…。

その言葉をしっかり伝えたかった。

でも…
言葉より先に…
涙が溢れ出てきた。


「え、お嬢様…⁈」


私は勝手に体が動いてしまった。
結城に抱きつく。


「お嬢様……⁉︎」
「ごめんなさい…っ、こうさせてほしいの……っ」
「お嬢様………」
「嘘じゃない……。嘘じゃないの…っ」
「ぇ……」
「……っ私は…っ、結城が…好きっ」

その言葉を伝える時は、
泣きながらだったが、
笑顔で言ったつもりだ。
結城から体を離し

「……気にしないで」
と言って、結城の部屋を出ようとした。

その時

(がしっ

結城に腕を掴まれ、
強引に引っ張られた。

そして…

(ぎゅっ


私の視界が一気に変わる。

…いい匂い。

結城の匂い。


そう、私は結城に
抱きしめられていたのだった。


「帆乃香……」
胸がドキドキして苦しい。
大好きな声で
私の名前を呼んでくれた。


「…なに…?」
「ありがとう…ございます…」

その声が心に響く。

何回も聞いた声なのに
気持ちを伝えてしまったので、
また好きになる。


いきなり結城に体を離されたので
少しびっくりする。

そして、また見える視界が一気に変わる

「ん……っ」

短いのに…
とても甘いキス。


そして、また結城が私を抱きしめる。


「……今まで隠しててすみません」
「ぇ……」
「…俺も帆乃香が好きだ」
「陽斗……」

その言葉が嬉しかった。
やっと通じた想い。


「大好きなんだ…。ずっと前から…好きだったんだ…」
「陽斗……っ」
「帆乃香。俺と付き合ってくれますか?」


私の答えは決まっている。


「…はい……っ」






これから
大好きな彼と
新たな生活が始まる。
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