紫季と惺

警備員

「うん。今日から。」




 え゛ーっ。






「じゃ、えっと、惺さんの勤務時間は、この時間帯?」


「違うよ。いつもは、この時間より、大分遅い。今日は、ここ初日だからって、早めに呼ばれただけ。」




 ふーん。




「俺が来るの、待っててもいいけど?」




 惺って言う人は、ちょっといじわるな顔で、疑問系で私に言う。




「えっと、遅くなるから、それは無理かも…。」


「冗談で、言ったのに、そんなまじめに答えなくても。」




 惺は、苦笑しながらそう私に言った。




「あ、えっと、平日毎日?」


「違うよ。この水曜日と土日。」


「えっ?少なくないですか?」


「体弱いから。僕。」




 わざとらしい、咳き込んだ音が聞こえた。




「本当ですか?」


「本当、本当。あれ?信じてくれないの?まぁ、しょうがないよね?じゃ、オレ、行くよ。」


「はい。さよなら。」


「またね。」





 惺は、私と反対方向に歩いていった。







「あっ。よかった。惺って言う人と被ってる日、水曜日だけだ。」




 って、今の、私、口にしてた?やばい。惺に聞こえてませんように。






 私は、自分の家に向かった。
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