殺人鬼械の痛み

2029.9.××






夏休みが終わり、二学期になって間もない、とある日の休み時間。
廊下で、翼が一人で、山のような量の教材を運んでいた。
春奈が反対側から歩いてきて、翼が一人で大量に抱える教材に気付く。


「山本君、運ぶの手伝うよ」

「いらねぇ、一人で運べる」


春奈はわざわざ立ち止まって翼に声をかけたが、翼はそんな春奈には目もくれず、一人で教材を運んで行ってしまった。
取り残される春奈。




その日の体育の授業内容は、テニスだった。
生徒達は校庭にはられたネットを挟み、思い思いにテニスをしている。

そんな中、春奈は静華と組んでテニスしていた。
静華は、練習相手の春奈が打ち返しづらいように、わざとボールを全て遠くに飛ばしていた。
春奈は、静華が飛ばしてしまったボールを打ち返そうと、必死に追いかけていた。

突然、走る春奈の脳内に、乗った事も無いジェットコースターの騒音と歓声が聞こえた。

春奈は驚いて立ち止まり、周りをキョロキョロと見回す。


「ちょっと、何立ち止まってるの? 早く取りに行ってよ!」

「ごめんね!」


イライラと大声をあげる静華に、春奈は急いでボールを取りに行って、打ち返す。





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