殺人鬼械の痛み





「……痛たたたたた……」

「春奈、大丈夫!?」


打ちつけた箇所を痛そうにさする春奈に、愛が心配して駆け寄って来た。


「何とか……。ありがとう、愛」

「大丈夫ぅ? 荷物が大きくてぇ、前がよく見えなかったよぅ。ごめんねぇ?」


わざと春奈を突き落した静華は、ニタニタと笑いながら嫌味を込めてわざとらしく謝るが、その嫌味は春奈にも愛にも伝わる事は無かった。
何も気付かない愛が、普通に静華を注意する。


「大丈夫だから良かったけど、春奈マジ危なかったんだから! 静華、気を付けて!」


何も伝わらない苛立ちに、静華はそっと舌打ちした。




不安定な机の上に乗り、教室内の最後の飾り付けをする翼は、大きなカラービニールを天井に貼ろうとしていた。
机のすぐ横で、春奈が飾りを壁に貼っている。
翼は上から、春奈にカラービニールを落とそうとした。この状況なら、机の不安定さを言い訳に出来る。


「翼、オマエ大丈夫? 机支えるよ」


通りかかったクラスメートの平由希彦(タイラ ユキヒコ)が翼に気付き、翼の立つ机を支えてくれた。
翼の企みは失敗に終わってしまった。その間に春奈は飾りを貼り終え、机の横から移動してしまった。





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