サヨナラからはじめよう
「・・・男のくせにこの寝顔は反則でしょ」

小さな声でそう呟くとそっと頬に触れた。
あったかい・・・・
人肌のぬくもりなんて、もうずっと忘れていた。

いくら昔付き合ってたからって、ようやく向き合えたばかりでこんな展開になるなんてあり得ない。本当にあり得ない!
心底そう思うのに。

司のあんなに切なくて色気爆発の顔を見てしまったら。
あんなに激しい想いをぶつけられたら。
もう逃げることなんてできやしなかった。

昔もべったりでこれでもかって甘やかしてくれる人だったけど、
昨日はそれだけじゃなかった。
・・・・あんなに激しい司は見たことがない。
まるで飢えた獣のように何度も何度も、何度も激しく私を求めた。

あ、駄目だ・・・思い出すだけで頭がショートしそうになる。
何か別のことを考えなきゃ・・・・!

「あ、ひげ生えてる」

顎に触れるとうっすらとひげが伸びているのがわかる。

・・・・・なんだか幸せを実感する。
本当に彼のところへ戻って来たんだなって。
3年前に彼の元を去ったとき、
まさかこんな未来が待っているなんて夢にも思わなかった。
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