『…好きでした、それからごめんね。』

私は止めておくと言い出せなくて結局は上杉君に差し入れするパウンドケーキを用意した。

それを持って上杉君の居る場所に向う私は好きな人へ贈り物をする高揚感がないばかりか、かなりの悲壮感を漂わせて居たのかもしれない。

友達が距離を置いて見守る中、上杉君へ声を掛けた…

「あの…上杉君もし良かったら…これ私が焼いたケーキなんだけど食べてください。

お友達と一緒にでも…」そう言ってパウンドケーキを手渡した。

上杉君はとても驚いた表情の後に笑顔を向けてくれて

「吉野…サンキューじゃあ遠慮なく皆で食うよ!」って受け取ってくれたから

私もホッとして硬い笑顔を返した。

それからもイベントは続き…

狡(ずる)い私は『好きです』と告白をしないままで、ユルユルと好意だけを露わにして…

上杉君にチョコを贈ったりもした。

そんな私のことを疎ましく思っている人が居るとも知らずに…

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