天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 この男は金持ちだし、頭もいいし、見た目もそこそこ。

 自分の事を本物の男だと思っているし、あなたにもそう言ったろうし、多分周囲もそう評価するでしょう。

 でもそんなことは関係ないの。

 あなたにとって、この男がどんな存在であるかが問題なの。

 それ以外のことに意味なんてないのよ。


「どうなの? あなたが永遠の愛を誓う相手は、この男なの?」

「…………」

「この相手なら、一緒に雑草食べても、公園の水汲んでも、オモチャの指輪でも、それでも構わないと思えるの?」

「お前、なに言ってんのか全っ然分かんねー!」


 完全に怒りに我を忘れた様子で怒鳴りながら、あたしとお嫁さんの間に立ち塞がり、こいつは叫んだ。


「そういやお前、昔から嫌な女だったよな! いっつもツンケンしてお高くとまって!」


 ツンケンしてたのはあんたの本性をお見通しだったからよ。

 誰があんたみたいな人間に、尻尾を振ってお愛想を振りまくもんですか。

 こんなあたしにだってね、プライドくらいはあるのよ。


「知ってるのかよ!? あの頃お前に言い寄ってた男はな、みーんな満幸目当てだったんだよ! なのにいつも偉そうにお高くとまって、バッカ丸出しだぜ!」


 知ってたわよ、それくらい。

 だからこそ自分に自信が持てなくて、鉄仮面に依存して、死ぬほど悩んで苦しんできたんだから。

 あんたに言われなくたって、自分で自覚してるのよ。そんなことは。


「姉に比べて顔もスタイルも中身も、カスだもんなお前! しかもなんだよ、そのパッド! 顔に怪我でもしたのかよ!?」
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