天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「詩織ちゃん、お疲れ様。近藤さんは帰った?」

「いえ、帰っていません。まだここにいます」


 ビックリして振り向くと、扉の所に立っているのは近藤さんだ。

 うわ! 近藤さんだったんだ!

 ……やっぱり詩織ちゃんが、そうそう簡単に心を入れ替えるハズないか。


「あ、近藤さん。どうしましたか? 忘れ物ですか?」

「いえ。聡美さんにちょっとお聞きしたい事があって」

「聞きたい事? 近藤さんが私にですか?」

「あれ? 『晃さん』じゃないんですか?」

「え?」


 イタズラっぽいスパイスが効いた笑顔を向けられて、ドキッとして頬が染まってしまう。


「どうぞ『晃』と、名前で呼んで下さい。私も聡美さんを名前で呼んでいるんですから」

「え……えー……あ、はぁ」


 笑顔で見つめられ、そんな事を言われ、ますます頬が染まっていく。

 名前で呼べって……。

 こ、この人、自分が結構ハズカシイ事を言ってる自覚、あるのかな?

 世の女性の皆が皆、詩織ちゃんみたく神経図太いわけじゃないんだけど。
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