天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 それにしても疲れる。疲労のせいでいつもより顔に皮脂が浮くのが恐ろしい。
 休む間もない激務の間に、化粧崩れはもう限界値。
 メイク直したい。メイク直したい。直したい直したい直したいー!

 ストレスで頬がひくひく痙攣し始め、本当に倒れそうになった頃に、ようやく休憩の交代時間になってくれた。
 ダッシュでトイレに駆け込み、顔に化粧水をスプレーしたティッシュを乗っけて、「うおーっ!」とビールを飲んだ中年男みたいな声を出した。

 はー、やっとひと心地着いた! メイク崩れが気になって気になって死にそうだった!
 大勢の人前で鉄仮面が崩れていく感覚は、私にとって恐怖そのもの。冗談抜きで心臓発作を起こしそうだった。
 ライトの熱のせいで崩れるのも早かったな。
 不覚だわ。もっと対策を万全に練らなければならない。
 そう考えながらファンデを塗り直しているうちに、徐々に気持ちが落ち着いていくのを実感した。
 ……なんだか私、麻薬中毒患者みたいだな。

 念入りにメイクを直してからゆっくりと食事を済ませ、ちょっと会場内を覗いてみた。
 詩織ちゃん、お昼ご飯どうするのかな? 食べてる時間はあるんだろうか?
 でも『プリンセス』は交代できないしなぁ。
 ……お? いたいた。ウチのプリンセス。
 あら! まさにこれはプリンセスだ!
< 84 / 187 >

この作品をシェア

pagetop