地球を守って!恋するヒーロー
私もだけど、千明もネリの苦しみを知らない。
知らないからこそ、知らない千明だからなのかな。

素直に気持ちを言葉にすることができるのは。


言いたくても、言っていいのか分からない言葉を口に出せる千明が羨ましいし、まぶしい。



「絶対に生きて、みんなで一緒に地球に帰ろう」



千明に返事をする代わりに、私たちは誰からと言うわけでもなく、三人で手をつないだ。


サイキックは手を重ねると、力を分け合うことができる。

そんなものがなくても、こうして手をつなぐと熱くなった手のひらから、気持ちが伝わってくるような気がした。


全てを理解することができなくても、背負っているものが違っても、目的は同じ。



「ついたぞ」



寂れた村について運転席のケニア人がそう言ってから、他のサイキックたちは車を下りる。


外は強風、未来は深い闇の中。

これから何が待っているのかも分からない、でも。
たったひとつの希望まで吹き飛ばされてしまわないように、ぎゅっと手に力を込めてから、車を下りた。

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