桃から生まれなかった桃太郎
たえは、その夜、何食わぬ顔で晩飯の用意をしていました。

男は、鬼になって、たえの家に押し入り、たえを小脇に抱えて連れ去りました。

父はすがりつき、母は泣き叫びました。

たえは、形ばかりに、手足をばたつかせて抵抗しました。

「かあさん、とうさん、ごめんなさい。

わたしは、この人と生きていきます」

たえは、決心が鈍るのを恐れ、心の中で、呪文のようにとなえていました。
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