秘密が始まっちゃいました。
私の涙はご多分に漏れず引っ込んだ。
ああ、心配で感動どころじゃない!


しかし、ここまではまだ順調な方だった。

最後の難関、新婦から両親への手紙が待っていたのだから。



「おとうさん、おかあさん、今日まで育ててくれてありがとう」


マイクの前に立ち、ベビーピンクのプリンセスラインドレスに身を包んだ瑠璃が手紙を朗読し始める。


「小さい頃、喘息で身体が弱かった私を、本当に慈しんで育ててくれましたね。おかあさんに背中を撫でてもらうと、咳がとても楽になったのを覚えています」


瑠璃の声は涙声だ。
瑠璃のご両親もすでにポロポロ泣いている。
一人娘の結婚式だ。きっと計り知れない想いがあるに違いない。


私は込み上げてくる涙を飲み込み、バッと横を向く。

やっぱり!
これで泣いてないわけないわな!荒神薫!

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