秘密が始まっちゃいました。
部下の裁量権がある彼としては、自分に好意がある部下をうまく懐柔するのも仕事のうち。
いきなり突き放して辞められたら、彼の上司としての資質に問題アリになってしまう。
しかも、彼女は同業メーカーの社長令嬢だ。

この難局を乗り切るのは、彼ひとりの力では厳しいかもしれない。

私がいたから何か変わるかといえば、たいして変わらないとは思う。
精々、相棒として彼の精神的な支えになるってくらいだろう。

ぶっちゃけ、羽田さんに涙の件も全部告白して、お付き合いの流れになれば一番容易い。
でも、それは荒神さんの望むところではなさそうだ。

それに、私だって……、
荒神さんの涙を誰かのものになんてしたくない。


「……わかりましたよ。今回に限り、協力します」


私は割合冷静に、そして納得して頷いた。

自分の気持ちに納得したわけじゃない。
恋かどうかもあやふやな独占欲。

ただ、自分の中に妙なモヤモヤがあり、それが荒神さんと羽田さんがくっつくのを嫌がってる。
それだけは認めなければならない。
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