秘密が始まっちゃいました。




雨脚は強くなる一方だ。
昼頃に待ち合わせた私たちは、入園前に軽くお茶を飲んだだけ。

別館の水生物園はまたの機会にして、どこか屋内のデートに切り替えた方が良さそうだった。


「じゃあ、うちに来いよ」


さらっと提案してきたのは、荒神さんの方。

私の脳裏には深夜のカップルごっこが過ぎる。
えーと、確かあの時は『新宿デート→荒神家にてイチャイチャ』っていう提案だったような。

私はわかりやすくおののいた表情をしている。しかし、荒神さんは気にしていない様子だった。


「また、メシ作ってよ。日冴の手料理が食べたい」


「ダメですよ。お邪魔できません」


「井の頭線で帰ってもいいけど、そんなに遠くないからタクシーにしちゃおうぜ。途中でスーパーに寄ってさ」


荒神さんの中ではすでに決定事項らしい。

< 239 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop