秘密が始まっちゃいました。
シャペルは大手家電メーカーであり、電子デバイス部門では液晶を中心に利益を出している会社。
我が社は代理店のひとつだ。キヅキ電産がこの業界でどうにか立っていられるのは、シャペルの威光も大きい。

つまり、荒神さんは代理店として、シャペルに対してイイ仕事をしたってわけね。

瑠璃はなおも言う。


「仕入れグループの私が見る限り、彼の働きはすごかったよ。納期管理、コスト調整、最適の部品の選定。
しかも、仕入れ先とも客先とも駆け引きが上手いんだ。ゾクゾクするような言葉の選び方をすんのよ。あの人、荒っぽい旧世代営業なイメージだけど、実際は違う。すごい緻密で計算高い人だよ」


瑠璃の語る荒神さんは、私に見せる泣き虫な荒神さんとは一線を画していた。

話が上手いし、魅力的な人なのは、わかっている。
それは頭の回転が早いってことだ。
損得勘定も、現状把握も人より上手い。


余計に荒神さんがわからなくなりそう。

私はナンをカレーに浸ける手を止めてしまう。
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