秘密が始まっちゃいました。
あの人は泣いていなかっただろうか。
あんなところで泣いていたら、注目されまくりだ。会社の人間に見られるかもしれない。
でも、彼は涙をコントロールできない。
涙も私もコントロールできなかった彼は、あの後どうしただろう。


好子おばちゃんは庭園の植物の話や、自分のこのホテルでの思い出を滔々と話し続けている。
私の反応が多少薄くても、気にならないようだ。
私は好子おばちゃんの顔を見て、何とか相槌を打とうと試みる。

その時だ。

好子おばちゃんより遠くに私の視線は釘付けになった。
小川とそこにかかる赤い橋の向こう、大きな池のほとりにいるのは……

荒神さんだ……。


荒神さんは私を見ている。歩いてきた普段と全く違う格好の私を過たず見つけ、じっと見つめている。
その目も鼻も、すでに赤いのは遠目からでもよくわかった。
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