秘密が始まっちゃいました。
羽田さつきは小柄な身体をよいしょと起こすと、くるんと踵を返した。


「勢いで告白してしまって、ちょっと恥ずかしいんです。それでは、お疲れ様です」


そう言って、彼女は先に早稲田通りの灯りの中に吸い込まれていった。
『恥ずかしい』ではなくて、角の発した『替わりだろ?』発言に傷ついていたのは、明らかだった。

角はたまらない罪悪感と、今までとは違う感情に胸を押さえた。



*****



翌朝、いつものように羽田さつきがLED特販部にやってくる。始業前のわずかな時間に、角にお弁当を届けにくるのだ。
外回りを理由にほとんど断っているのだが、彼女はめげずに毎日やってくる。


「おはようございます。角さん」


まだ人もまばらなLED特販部のオフィス。角はデスクの横に立つ彼女を見上げた。
そして、差し出されたお弁当を受け取った。
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