秘密が始まっちゃいました。
いとも簡単に答えは返ってきた。


「総務部の結城真子と食事の約束があるんです。すみません」


あれ?
俺ってこのコの好きな男だよね。

好きな男から念願の食事の誘いって状況だよ?
それを一瞬の躊躇もなく、断ったよね。

あれ、うん、おかしいな。
おかしいのって俺の方?


角が半分パニックになった脳内でくるくる思考をめぐらせるうち、羽田さつきはいつもどおり一礼し、背を向けた。
ショートカットの毛先を揺らし、ヒールを鳴らし、去っていく彼女を角はぼんやり見送る。


やっぱり、変わってる。
やっぱり、変な女。


でも、この弁当のお礼も、これまでの誤解のお詫びも、なんとかしてしなければならない。
彼女の想いを無視するほど、悪い男にはなれない。

それに、もう少しだけ、あの変な女のことが知りたい。
もう少しだけなら、歩み寄ってもいい。


「土曜なら空いてっかな」


角はひとり、ごちてスマホを取り出す。
始業前に彼女に送るメールを考えるためだった。




end


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