秘密が始まっちゃいました。
荒神は眠る望月を一瞥した。


……おまえな、俺が理性ある大人で感謝しろよ。


そんなことを心中呟き、荒神はシャワールームへ向かった。
天下泰平。安らかな寝顔の望月日冴を置き去りに。

熱いシャワーを浴びて煩悩を散らす作業に入る。
荒神は思った。
やはり、望月日冴は早いうちに自分のものにしなければなるまい。

あんなお人好しで油断の塊女、放っておいたらあっという間に他の男に食べられてしまう。
幸い今は『荒神薫と仲がいい』という認識が社内にあるから、虫除けにはなっているのかもしれないけれど……。


「やっぱ、使うか。奥の手」


望月の気持ちはともかく、もっと強烈な虫除けは要る。
誰にも渡さないように、誰も彼女に近づかないように、打てる手は打たなければならない。

彼女に好いてもらうのはそれからだっていい。
ゆっくり時間をかけて、泣き虫以外の男らしいところを見せていけば、望月の気持ちだって動くだろう。
まだ、このゲームは始まったばかりなのだから。

荒神は煩悩を決意に変え、熱いお湯で頭をガシガシと洗った。




<了>


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