オーロラ ヲ 解く
目が乾燥してきた私は、
ユズルさんに、メロメロになってる――?
無言で見つめ続ける私を、真っ黒な瞳が見つめ返す。そのあと一瞬だけ怪訝な表情をすると、「ああ、アンタ」低く呟いた。
「悪かった……アンタ、俺のこと覚えて、」
「―――お、覚えてるっ…」
そう咄嗟に答えてしまった口を、小さく押えた。
彼はゆっくりと瞬きを繰り返したあと「そうか」と、何とも言いづらい表情を作った。
ど、どうしよ…っ…
ユズルさんに変に思われたくなくて、ユズルさんに、覚えてないなんて伝えたくなくて、ウソをついてしまった。
黒のスーツに、黒のネクタイ。
獰猛な黒い馬を連想させる、隙のない雰囲気。
対面する、無表情で威圧感のある男の人は
――――全く記憶にない人、だった。