EXCAS

陰り

 次にショウが目覚めたのは、またベッドの中だった。
 ただし、今度は見慣れた白い天井ではなく、飾り気のない暗い部屋。
 それが反抗組織に入ってから当てられた自室だと、認識確認に十秒の時間を要した。
 不意に、ある光景が被さった。
 見上げた天井と、ある日の空にそっくりだ、と。

「……目が覚めましたか?」

 ギクリ、と背筋が寒くなるほど冷たい声。
 油が切れた機械の音を立てて、その方へ顔を動かした。

「おはようございます。いい朝ですね」
「ゃあ、おはよう、レナ。今日は、いい天気だね」
「すみません、生憎の雨空模様なんですよ、今日は」
「ぁ、ああ、そうなのか。いやー残念だ、ピクニックにも行けやしないなあ」
「ええ、そうですよ。残念。だから、これからゆーっくりとお話しませんかぁ? いえ、別に話す必要はないです。わたしの言葉を、黙って聞いてれば」
「……あの、謹んで、御辞退」
「ええ? なんですって?」
「いえ! 拝聴させていただきます、サー!」

 警鐘がなったと、ショウは思った。
 反射的に退路を探すが、相手は出入り口側に椅子を置いて座っている。本調子ではない状態で逃げ切れるかといえば、答えは否。
 その時、彼は死を覚悟しましたとさ。
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