EXCAS

虹の下で

「やっと」

 口を開いた。
 その事に驚きはなく、当たり前のように受け止める。
 構わず、続けた。
 答えがなければ独り言で、濡れてかかった前髪が幽霊に見えた。

「やっと、みつける事が、できた」

「……それはよかった。ここに、お友達が眠っていますよ」

 答えがあった。
 涼やかな音で、この雨の音には負けるほど小さく。
 けれど夏の風鈴を思わせる澄んだ音。
 幽霊の人影は、しゃがむ事なく手を合わせ黙祷した。
 雨音だけが煩くて、子供の声は聞こえない。
 二人も当然喋る事はなく、ただ墓前に祈るだけ。
 そこはいつかの戦いで犠牲になった者たちの墓。
 何人も失って、遺体がないからたった一つに纏め上げた。
 失礼とは思いながら、本人たちの前に立つわけにはいかないから。
 それは、後悔はしなくとも責任を感じる行為だから。
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