EXCAS

戦場哀歌

 木々を抜けると、濁った白色の戦艦が見えてきた。
 簡易柵で囲まれた入口に着いた時、見張りの者から指示を出された。難民は戦艦まで行き手続きをしろと。ここを探し終えるまで滞在するのだ、致し方なく車を走らせる。
 位置は最深部、門前から陸上部隊駐屯区、難民の居住区、戦艦周辺地区、戦艦本体となっている。
 通り過ぎた居住区は、名の割に質素だった。それでも賑わいがあり、悲しんだ雰囲気はなかった。三日は短い間隔だが、確かな日常を繰り広げていた。
 スピードを落としながら通り過ぎるが、その中にリンの母親はいなかった。
 特徴は聞いたし本人もいた。人通りが多い道だったためか落ち込まないのが無理だった。
 それから先は誰にも会わず、正規軍の制服ではない兵隊がいた。
 けれど居住区とそんなに変わらない時間で抜け、今ここに至る。
「さて、どこから入ったらいいのか」
「案内をしてくれる人がいるのかも。でも、もう少し詳しく教えてくれても」
「うろうろしていたら補導されそうだ。何せ、大人というのは自分の我侭を通す生き物だからな」
『おい、そこで何をしている!』
 敵意剥き出しの視線、声がした上方を睨んだ。
 戦艦のデッキの上から、幾人かの大人たちが見下ろしていた。
 そのまま会話をするつもりか、何の用でここにいると声を荒げた。
 重い溜息を吐くショウ。
 所詮ならず者の集団か、と。苦い毒を吐く。
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