きらいだったはずなのに!

 そんなあたしに満足げな笑みを浮かべた桐島さん。


 本当の性格を知ってしまった今でも、その顔は神様のように見えた。


 中身は悪魔だし、イケメンという皮をかぶった魔王のような人だけど。


「心配するな。俺がおまえを這い上がらせてやる」


 自信ありげな顔でそう言ったスーツ姿の桐島さんに、不覚にもきゅんとしたのは。


 ……絶対に、秘密だ。


 こうして、彼との週4日3時間スタディーライフが見事幕を開けたわけです。


 が……。


「そうだ。つーかおまえ、階段上るときパンツ見えてたし。次からは制服着替えとけよ」


 最初の雑談後、残り2時間半はしっかりと勉強の時間となり、ぐったりしたあたしに帰る前に桐島さんがかけた言葉は、そんな恥ずかしいものだった。


 結局、お茶を出すのは忘れてた。


 そんな嫌味で思い出したんだけど。


 ……この時のあたしは、まだ知らない。


 これから先、どんな地獄があたしを待ち受けているのか。


 どんな壁にぶち当たるのか。


 桐島さんを、どんなふうに見るようになるのか。


 ……あたしは、知らない。

< 35 / 276 >

この作品をシェア

pagetop