きらいだったはずなのに!
そんなあたしに満足げな笑みを浮かべた桐島さん。
本当の性格を知ってしまった今でも、その顔は神様のように見えた。
中身は悪魔だし、イケメンという皮をかぶった魔王のような人だけど。
「心配するな。俺がおまえを這い上がらせてやる」
自信ありげな顔でそう言ったスーツ姿の桐島さんに、不覚にもきゅんとしたのは。
……絶対に、秘密だ。
こうして、彼との週4日3時間スタディーライフが見事幕を開けたわけです。
が……。
「そうだ。つーかおまえ、階段上るときパンツ見えてたし。次からは制服着替えとけよ」
最初の雑談後、残り2時間半はしっかりと勉強の時間となり、ぐったりしたあたしに帰る前に桐島さんがかけた言葉は、そんな恥ずかしいものだった。
結局、お茶を出すのは忘れてた。
そんな嫌味で思い出したんだけど。
……この時のあたしは、まだ知らない。
これから先、どんな地獄があたしを待ち受けているのか。
どんな壁にぶち当たるのか。
桐島さんを、どんなふうに見るようになるのか。
……あたしは、知らない。