おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「婦人科…かー。」


大学病院の中を歩きながらこの前とは違う科へ向かうことに思いを馳せていた。




今日は流産後の診察に来ていた。
手術後に、クリニックから一度見てもらうように言われたからだ。




本当はもう2度と行くもんかと思っていた。
そこは…あなたが止まってしまったのを目にしたところだから。



でも、子宮のことも含めてきちんと見てもらうこと。これが次に繋がるかもしれないと思ったらなんとかここまで来ることができた。




季節はすっかり秋になっていて、長い病院への道のりも短く感じた。
自分の体もあの時と違うし……
そう思うと、周りの景色も違って見えた。









「子宮は綺麗になっていますね。」


今日は女の先生だった。

若い先生だけど、しっかりしている先生。
なにより話しやすそうな先生だから安心した。



「はい…」

もう見ても何も感じない。
空っぽの子宮を見ながら返事した。




「で………子宮の形は…と。」


子宮の形はエコーでは分かりづらく、普通は卵菅造影や子宮鏡を使う。



大学病院だから質の良いエコーなのか、写し方を返ると私にもわかるように子宮の形が浮かび上がった。



丸くない…
くびれた子宮の形が………



「…………。」




わかっていたけどショックだった…。

私は…やっぱり双角子宮なんだ…




診察室に戻り説明をうける。


「確かに子宮の形は、ちょっとかわってるけど今すぐどうこうするって問題ではないです。」


「産めるんですか?こんな子宮でも…」


そんなこと、誰にもわかるはずないけど、聞いてしまった。

分かりません。とか当たり前の答えが返ってくるかと思った。




「産めますよ。産んでる人もたくさんいます。子宮もいろいろな形があって………」


先生は紙にたくさんの子宮の形を書いて説明をしてる。

でも、私は先生の話をまるで聞いてない。

先生の「産めますよ。」の言葉が頭の中をめぐっていた。




私でも…産めるんだ…。
産めた人もいるんだ…


もしかしたら先生の気休めかもしれないけど、嬉しかった。





不育症の検査も、まだ流産1回目だからする必要はないと説明をうけ、このまま妊娠を待つことにした。



子宮が手術から回復するまでの2ヶ月間。



私はこれまでないがしろにしてきた自分の体について見直すことにした。



あの子に心地よい場所を用意してあげるため。
あの子がすぐに戻ってこられるように。



それだけが私の原動力になった。




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