おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「今は35歳が高齢出産っていうけど、昔は30歳だったのよねー」

保育園で子どもたちをお昼寝させた後、クラスの先生たちで事務の仕事をしながら話した話題だった。

「え!?30ってまだバリバリ働いてる人ばっかじゃないですか!」

まだ19歳の私には早い話かもしれないけれど、働いて好きなことやってたら30歳なんてあっという間じゃない?


「私も30になってようやく観念して子ども産んだんだけどやっぱり体力の問題がねー」


先輩保育士は思い出すように話し続ける。

「やっぱりお金もかかるし、若いうちに産んで働ける体力があるうちがいいよ。
そのうち部活だ、塾だってなるしねー」

「へぇー」

やっぱり、自分に近い人物の話は心に響く。

実際、結婚も2年を過ぎると「子どもは?」の無言ながらのプレッシャーも感じてくる。
保育士でクラスの担任をしている私にとって年度途中の予期せぬ妊娠は決して許されることではない。
だからまだ考えていない。

そうは言っても世間体的にそろそろ…

そんな気持ちは伝わってくる。
時たまデリカシーのない親戚からの「そろそろ産んだら?」の言葉にウンザリしていた私でも素直に話題に興味がわいた。


確かに保育士を続けながら子育てするなら、体力があるうちでないと無理だろう。


「そっかー」
相づちをうつ私に先輩保育士は覗きこむように語りかける。

「麻那先生は考えてるの?」
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