おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
ザザア………

ザザア……………






ずっと、ずっと海に来たかった。





あの子が空に帰ってしまったあと、陽とすぐに海にきた。

もっとずーっと遠くに行きたかったけど。

一番行きたかったのは海。





空と海がくっついてるみたいなこの景色は、この世で一番空に近いように見えるから。




陽は、遠くの浜辺で一人空を見てる。

私は一人、波とたわむれてる。





一人で考えてみたかった。
空に近いこの場所で。






「なんでだろ………」




波の音は次々と私の声をかきけすから、誰にも聞こえない。


「ねぇ…どうして………?」



涙を流しても、海風が優しくふきとってくれる。



「なんで…私だけ……」

「私が何をしたの…?」



何度も……問いかけた言葉が、宙に舞う。









人はさ、誰もが平等じゃないんだよ。

いつ、誰に何が起きるかわからないし、私に何か起きたとしても他の誰かには起こらない。


誰かが不幸なとき、誰かは幸せで…

誰かが苦しみを乗り越えた下で、また誰かが苦しんでる。





不公平だよね。良いことも悪いことも。







でもそれは、悪くないと思う。



平等じゃないから、今を大切にできるし、他人に優しくなれる。










わかるけど。
つらいから海にきた。





海は誰でも平等に癒してくれる。








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