おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「ねえ。報告があるんだけど。」



普段もったいぶった話をしない私の様子に驚いたのか陽の表情が変わる。


「なに?」

「実はさ。……妊娠したかも。」


どんな反応をするのか楽しみにしてた私には少し予想外の陽の言葉だった。



「本当に!?ついに俺も親ってやつか!?」



嬉しそうな顔はしてるけど、意外と冷静な反応。



「そりゃ思いっきり気を込めたしな!やったじゃん!」

「もー!何それ!」


いきなり挟んできた下ネタに二人して笑う。



そっかー…と笑顔で宙を仰ぐ陽の顔は、高校生のあの時に見た表情と全く変わっていた。


妊娠検査薬や避妊の話をしても頼りなかったかつての彼と同一人物とは思えないくらい違う表情。


今目の前にいる彼は、嬉しさと一緒にこれから来る生活の変化への思い。
そして妻とその子どもを養っていく責任を受け止め感じてくれている。



「すごい!」
とか、
「おめでとう!」
とか、
まるで他人事のような喜び方じゃなく、自分のこととして受け止めてくれた。
言葉じゃなく、表情で陽がどれだけ喜んでるか私にはわかった。


派手な言葉はなかったけどこれ以上嬉しいことはなかったよ。

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