(仮)



男はすぐにキッチンから戻って来た。

手に湯気の立つカップを持って。


「ほら。俺特製の野菜スープだ。飲めるか?」


私は見知らぬ男から食べ物をもらう事に戸惑いを感じたが、確かにお腹は空いている。すごく。

それにいいにおいの正体はこのスープだ。

私は小さく頷きカップに手を伸ばした。


「おっと。俺が飲ませてやる。お前は寝たままでいろ」


男はそう言うとスプーンでスープを掬い、私の口元まで運ぶ。


なんだか恥ずかしい…。
私、赤ちゃんみたいだ…


「なんだ、口移しがいいのか?」


情けなさからなかなか口を開けないでいると、突拍子もなく男はそんなことを口にした。

びっくりして男の顔に目をやると私を見つめニヤニヤしている。


「だったらしてやるぜ」


そんなことを言いながらカップを自分の口に近づけるものだから、私は慌ててその手を引いた。


「冗談だ」


男は楽しそうにクスクス笑いながら再び私にスプーンを近づける。

男の笑顔は意外にも優しかった。
とても。

その笑顔につられるように、今度は私も素直に口を開けた。





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