レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
―閑話 ― ある執事の受難その3
 なぜ、屋敷に盗賊が押し入るような真似を許したのだろう。
 マクマリー家執事、ヴァレンタイン・パーカーは頭を抱えていた。
 貴族の令嬢としては型破りな主が、自分の家に起こった事件を黙って見過ごすはずもないのだ。警察官僚相手に、愛嬌を振りまいていたまではよしとしよう。
 よろしくないのはその後だ。

 ――敵の誘いに応じて、劇場に乗り込むだなんてありえない。
 事務作業を任せていたアンドレアスの裏切りに気づいたのは、さすがと言うべきなのだろう。
 大陸にいた頃、父親のかわりに商会を切り盛りしていたというだけあって、貴族の令嬢としては珍しく、数字にめっぽう強いのだ、彼女は。

「藪をつついて蛇を出してしまった感じ?」

 なんて首を傾げられても、パーカーには何も言えない。できることなら止めたかったけれど、彼女をとめる手も考えつかなかった。
 劇場に乗り込むなどと言い出した時、いっそ一服盛ってお休みいただこうか――なんて、執事としてあるまじき発想が頭を過っても、許されるのではないかとパーカーは思う。
 目が覚めた時のエリザベスの反応を考えれば、そんな計画はすぐに頭から消し飛んだのもまた事実ではあるが。

< 113 / 251 >

この作品をシェア

pagetop