オレンジの片想い

涙はいいけど、嗚咽はしんどいなあ。


ほんと、伝えるの放課後にして正解だった。もし昼休みとかに言ってたらどうなってたことやら。



...蒼真は、どうなったかな。


ちゃんと伝えられただろうか。明日になって"告えなかった"なんて情けない顔で言われたらどうしようか。



まあ、信じるしかないよね。

明日には、蒼真の幸せそうな笑顔が見れるように、ってね。



それにしても、シャツの袖がびしょびしょだ。たしか鞄にタオルあったはず。持ってきててよかったと心底思った。



タオルを取りに行こうと、ふらふらと立ち上がって一歩足を出した時。




ガラリ、ドアが開いて、息が止まるかと思った。




背中を見せている状態だったのが救いだ。こんなひどい顔、誰にも見せられない。


とりあえず、泣いているのをばれないように、嗚咽を必死に堪えた。ドクドクと血が流れる音が響く。堪えていても、やはり少しは漏れる嗚咽を恨んだ。



足音が、少しずつこちらへと近づいてくる。




...誰?




後ろを振り向けないことに恐怖を感じて、息を潜めると、その人物が漸く声を発した。



「....雪葉」



え、この声.....




「あき...と...?」
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