神様のおもちゃ箱

――…


「どーも、どーも、何かごめんなさいねぇ」

「ちくしょ〜…俺の、俺の520円〜!」


夜7時。

ちょうどいい感じに腹も減ってきた。


いい香りが漂うゆかり食堂のカウンター席で、今日「俺が居眠りするかどうか」の賭けに見事に負けた俺は、

惜しみながらも、約束どおり望乃の手に小銭を置いた。



うう、なけなしの520円。

たかが520円、されど520円……。



なんせ、俺は、少ない仕送りとバイト代で何とかやりくりしている貧乏学生なのだから。



望乃はにんまりと笑顔でそれを受け取り、「はい、確かに」と自分の懐におさめた。

あ〜あ、こんな賭けしなければよかった。



「だから無理だって言ったのに」

「ねー、輪ちゃん」

「あーもう、うっせぇよ!」


隣で俺の心を読み取った輪が、笑ってお冷を飲んだ。
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