18.44m





ストライクゾーンを大きく上に外れたボールが、揺れたミットのふちを弾き、駿の顔面にぶつかった。


勢いでキャッチャーマスクが宙を舞う。


あれがなかったら大事になっていただろう。



会場全体の空気が凍りつくのを感じた。


それは一瞬のことで、すぐに歓声とは異なるざわめきが広がる。


主審が指示をだし、ダッグアウトから監督とマネージャーが飛び出してきた。


救急箱を抱えた係員も駆け寄る。


駿は眉間にしわを深く刻んで鼻を押さえていた。


指の間から真っ赤な血が流れ出て、ぽたぽたと地面にしみをつくる。


遥はだらりと両腕をぶら下げ、駿が運ばれていく様子を呆然と見つめていた。


頭の奥がしびれて、思考回路が働かない。


バッターボックスを離れた5番が、軽く素振りをしてこちらに目を向けた。


無表情のままだった。


対峙していたときと同様に、ただ遥を見ていた。



「清水、下がれ。交替だ」



後ろから神崎に肩を叩かれた。


ブルペンで投球練習をしていた豊岡が、マウンドに走ってくる。


本塁には後藤がいた。



「清水」


「せ、んぱい。おれ……」


「安心しろ、あとは先輩に任せとけ」



そのあとのことは、よく覚えていない。


豊岡に頭を下げてベンチに戻り、うす暗いダッグアウトの奥から、まぶしく光るグラウンドを見た。


いや、記憶に残っていないから顔だけ向けていたのかもしれない。


向けたまま、隣で真っ赤に染まったティッシュを鼻に押し付ける駿に「ごめん」と謝った。


駿からは何も返事はなかった。


それ以来、あいつとは会話をしていない。



豊岡たちは、滅多打ちにされる事態をどうにか避けた。


それでも点差は最終回まで縮まらなかった。


そのまま試合は終了。



インターハイ県予選は、3回戦で敗退した。








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