白い花
出会い
「今」思えば、現実だったのかわからない時もある。
でも、紛れもなくあの時間はあったし、あの人もいた。
でも、「今」の自分にとっては、あの時間は過去の一時で、昔話のようなものだ。


俺は、瀬田京介。普通の高校に通う高校3年生。取り立てた特技もないし、ミスコンにでるようなイケメンでもない。とりあえず、毎日を平凡にふつうに暮らしている。

桜が咲く道を抜けた川沿いに、俺の通う高校はある。
入学式を控えて、教師が出勤する中、俺は部活があるので学校にやってきた。
いつもの駐輪場に自転車を置き、部室に向かうと、大きな声で名前を呼ばれた。
「せたー!おはよー!」
彼は、同じ部活の小野大地。
中学からずっと同じクラス、同じ部活の腐れ縁。
「おはよ。朝から、テンション高いなぁ。」
「まじ、すげーニュースあるんだって!!今度の新入生に、芸能人いるらしい!」
さすが、【情報屋大地】。学校のカップルやら、教師の不仲情報、近所の遊び場まで、幅広く揃えてる。
「へー。そうなんだ。」
俺が気にない返事をすると
「ホント、瀬田はそーいうの興味ないよなぁ。」
と、つまらなそうにしている。
仕方がないので少し聞いてやることにした。
「んで、芸能人っていっても、いろいろいるじゃん?ドラマとかでてんの?モデルとか?」
「おまえも知ってるぐらいの有名人だよ!この前、雑誌のグラビアも出てたし!」
俺は、あんまりテレビを見ない。みたとしての歌番組ぐらいで、バラエティ系ぐらいで、ドラマも毎週みるのがダルいからみていなかった。
「だから、誰だよ。」
なかなか名前を言わないので、一応聞いてみることにした。
「聞いて驚け!この前、映画でヒロインをやっていた、宮下咲ちゃんだ!」
自信満々に話すが、顔が浮かばない。
が、その名前には聞き覚えがあった。
でも、別にテレビや雑誌で聞いた名前ではない。
「そっかー。映画のねぇ。」また気のない返事を返すと、部室に到着した。

俺は、テニス部に所属しており、一応団体戦でもダブルスのレギュラーをつとめている。といっても、全国にでるわけでもない、公立高校のレギュラーだから、テニスで飯を食っていけるわけでもない。

部室に着くと、既に後輩たちはネットの用意と、練習の準備をしている。

「後輩たちよ!君たちの後輩に、すごい女の子が来るぞ!」
早速、大地は後輩たちにさっきの話をしている。俺の反応が鈍かったので、後輩たちに持ち上げてほしいらしい。

俺はユニフォームに着替え、ラケットのグリップを張り直していると、後輩たちからすごい歓声が上がっている。
「大地さん!マジっすか!!それ!」
「実は冗談だったとか、笑えないっすよ!!」と、大興奮だ。
「俺をなめるなよ!情報屋大地の名にかけて、保証してやる!!」天狗状態で、そぉ叫ぶと、後輩から歓声が上がる。
遅れてきた同級生も加わり、大騒ぎだ。
俺はというと、どこで名前を聞いたか気になったが、それだけ有名なら、と考えるのをやめた。
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