大切な君に……【短編】



「……へっ?」


まあ、何とも気の抜けた声が出たもんだ、と自分でも分かったけれど、そんなことを流暢に考えている暇はなかった。


「……なんで、俺から逃げようとするの?」


だって、それは、先輩と一緒の空間にいることが嬉しくて、だから緊張しすぎて……なんて言えないじゃないですか!


「いつも、逃げるじゃん」



いつも……?
ああ、みんなが先輩の部活を見てるとき、私も端で見てるんだけど、前の方で見る勇気はないから、すぐに立ち去ってはいたけれども。


まさか、それに気づいていたというの??


「えぇと……それは」


先輩は相変わらず私のことを凝視している。
そんなに見られても困るのにぃ……。









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