同居人は女社長
2年のうちにあれこれと
さすがに実家には俺の部屋が残っていて安心できた。
きれいになっているのは母さんが落ちていた本や紙くずなどを掃除してくれたからだろう。


ざっとだけれど、両親から俺のいなかった2年の間にこの家で起こったことを聞いた。


今から1年ちょっと前に街へ両親が買い物に出かけたときに大事故が目の前で起こった。

狙ったように追突された車がぺちゃんこ状態になっていた。

両親はあわてて警察や病院に連絡をいれて救助の手伝いをした。


しかし、追突された車からは死体しか出てこなかった。


幸い、車は爆発せずにすんだので、連絡先や亡くなった人の身分などはすぐにわかった。



それが、彼女の・・・エリンティア・クォンテ・ドネリティの両親だった。

父親のマリウスと母親のメルディ。

2人はドネリティコーポレーションという洋食器や美しい雑貨などを扱う会社の社長と社長夫人で、エリンは2人の1人娘だった。


1人娘ということはすべてが相続されるということだが、当然お金持ちともなればいろんな噂ややっかみもきつかったと思われた。


彼女はそもそも、両親と同じ車に乗っていなかったのは、ボーイフレンドと遊びに行く約束があったからだった。
しかし、彼女がドネリティ社を継いで仕事をし始めると、恋人は何かとお金をせびる行為をしたり、金目のものを欲しがった。


もう、ほとんど確信犯という事実がわかった日、エリンが自宅に入ると我が物顔で別の女と恋人が同じベッドの上にいるのを見て、逃げ出した。


目指す宛てのない彼女は両親が死んだあの場所の前で泣いていた。


そこにうちの両親が遭遇して、家へ迎え入れた。

そして・・・今に至っていると。


もう少し掘り下げると、そのお礼と事情のわかっている誰かと両親の残した会社を見てみたいという彼女の願いで、弟のラングリオはエリンの部下として就職したのだった。


それにしても・・・どうして・・・どうして同業者なんだ!

なぜ弟は俺のいる会社ではなくて、彼女の部下になったんだ。


そりゃ、俺が営業部長をしているガオンティル社は伝統はあっても、斬新さがなく、時代に取り残されるような会社には学生たちも就活したいと思わないだろうな。


けれど、俺だって会社に愛着は持っているわけで・・・つぶれ行くのを黙って見ているわけにはいかない。
だから何か手は打たなくてはならないとあせってみたが、いい案は出てくるわけもなく、イライラした結果がとりあえず実家に帰ろうと思ったのだった。
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