同居人は女社長
つい、思ったことを口にしてしまったと自分で俺は驚いてしまった。

エリンと会ってから、愛想笑いみたいなのは数回見たけれど、俺にはなぜかどれも笑ってるふうには思えなかった。


しかし、遊覧船で風や夜空を楽しむ姿はすごく新鮮で、まるで高貴な絵本を見ているようだった。

そしてこの笑顔だ・・・。


まさか、俺もこんなデートが彼女にとって初めてだとは思わなかったが、正直いって俺もうれしいと思った。

いつもは妹たちを連れてこんなことをやっていたわけだけれど、エリンは妹たちよりも子どもっぽい感じがして

ふわふわしたお菓子が似合いそうな女の子だと思った。



「ほれよ、食べてみろよ。」


突然放り投げられたお菓子を受け取ったエリンは、


「ちょこ・・・?」といって口にほおばった。



「あまいけど・・・しつこくない。おいしぃーーー!どうしたのこれ?」


「妹どものお土産のミートパイの店の隣の店で売ってたチョコレートだよ。」



「あいつらってさ、遊覧船に乗ってもとくに感動がなくてな・・・10分もすると、つまんねぇって言い始めるんだ。
だから、岸につくまでにチョコレートを食べさせておくんだな。
これぞ、俺の考えた生活の知恵だ。」


「わぁ・・・いいなぁ。」


「いいかなぁ?」


「うらやましいわ。お兄さんにいろいろ連れていってもらえるだけでもうらやましいのに、チョコの配慮までしてもらって・・・いいなぁ。

さっき、マルティやラングみたいに気がきかないって言ってたけど、そうじゃないじゃない。

兄弟それぞれに気のつくところが違ってるだけでしょ。
いいなぁ・・・お兄さんが3人もいて。」



「なぁ・・・こんなのでよかったら、これから週末とか時間ができたときに、出かけないか?」


「えっ?私のために出かけてくれるんですか?」


「嫌か?」


「嫌なんてことありません。
私、この町のこともあんまり知らないし、私みたいなコを連れて出てくれるお兄さんがいるだけでうれしいです。
本当です。
こんな星空・・・見たことなかった。

こんなデートなら大歓迎です。
あ・・・でも・・・いいんですか?レッドが彼女を作る時間を取ってしまいますよ。」


「そんなもん、いらねえって。
うちの妹たちが当たり前に出かけたとこに行くくらいだから、しれてるしな。」


「わぁ・・・楽しみ。」


俺はそういって目を輝かせている娘をもっと楽しませたいと本気で思っている。

妹たちが喜んでいる姿を見てるのも楽しかったが、今夜は格別な気分だ。


俺だけしか知らない笑顔をいっぱい見ていたいと思ってしまった。

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