同居人は女社長
夢は平凡で
ハルビィはマスコミへの対応や得意先への説明などに追われて、本来の仕事に手を出せなくなっていた。


ハルビィの家にいたエリンも、ハルビィが家にもどっても来ないし、ボディガードたちも呼ばれて会社や工場を向かってしまったので、ヒマを持て余していた。


「最近・・・どうしたんだろう?
とうとう、ここからも人がいなくなったわ。」


ピンポーン!


「誰もいないのかしら・・・?私が出ていいのよねぇ。
はい、ただいま。」



ガチャ


「エリン・・・!やっぱりここだった。」


「レッド!?どうして・・・ここに?」


「詳しくは安全を確保してからだ。
誰もいないのか?」



「ええ、何か朝からみんないなくなってしまったの。」


「そうか・・・ラングたちがうまくやってくれてるんだな。
よし、ここから出るぞ。」


「はい。」


レッドはエリンの手をひいてハルビィの邸の外に出ると、車を走らせ山の上の方にある邸へと到着した。


「ここは何なの?」


「ここはクリーブの別荘だよ。
俺の実家やアパートはみんな知られてしまってるだろ。

クリーブが逃げだすことが出来たら使ってくれって鍵を預けてくれたんだ。」


「そう。レッドはクリーブと仲良しにもどったのね。」


「俺たちは仲が悪いわけじゃない。
そりゃ、ちょっとびっくりはしたけど・・・ちょっとした誤解があっただけだ。」


「それならよかったわ。」


「エリン・・・ひどい目にあったな。
ごめん、俺が目を離したばっかりに。

怖かっただろ。ハンクが殴られて倒れてどうなってしまうのかショックだったよな。」


「ハンクは?大丈夫なの?」


「ああ、もう意識ももどってるし、俺たちに協力してくれたんだ。」


「よかったぁ・・・あんなに殴られて、私も見てるだけで気分が悪くなってしまって・・・。
そしたら、何が何だかわからなくなってしまって。」


「な、なぁ・・・男たちにエリンも何かされたのか?
ご、ごめん、いきなりこんな質問して。
けど、俺は・・・俺は、君のことが心配で眠れなくて・・・こんなことをきいてはいけないんだろうけど、やっぱり気になるし・・・。」


「大丈夫だと思う・・・。気がついたら、ハルビィが目の前にいたし、体は痛くなかったし。」


「体は痛くないってことはどこかが痛いのか?」


「腕がちょっとね・・・」


「腕?・・・ちょっと見せてみろ。
どこだ・・・?」


「ちょ、ちょっと、やめてよ。いやぁ!」


エリンの袖をざっとたくしあげると二の腕部分にほそいものでたたかれたような跡がくっきりとあった。


「なんだ?・・・これ・・・小さなムチみたいなものか?」


「ええ、しつけ用みたい。
デザインがうまく考えられないときは、よくたたかれちゃって。」


「なんてやつだ!会社をつぶしてやるだけで、許してやろうかと思ってたが、許せないな。」


「化粧品会社をつぶすの?」


「心配するな。社員のことはクリーブとドネリティのお偉方とで心配いらないようにしてある。」
< 60 / 65 >

この作品をシェア

pagetop